「なんでホテルなんだ」
「おい・・・・本当に大丈夫か?」
「なんでホテルなんだジョン!」
「怒るなよ、がここにいるんだ。僕はこれから夜勤だし、調子悪そうだから君一人残せないよ」
「なんでがここに」
「ここの方が政府にいくに近いからさ、しばらく泊ってるんだって。
2,3日マインドパレスから帰ってきてなかったから知らなかっただろうけどさ」
「それはまずい!まずい帰る!!!」
「おいおいおいおい!駄目だって、何の薬飲まされたか分からないんだぞ!」
「今、に会うわけにいかない!」
「何ってるんだ、君を一人で残して行けない」
「僕は大丈夫だ!!!」
「なにしてるの?」
声が聞こえただけだった。
声が聞こえただけだったのに押し込めた熱が再び燃え上がる。
おかしい、おかしい!
振り返るとがエントランスに立っていた。
「シャーロックが、犯人の女に薬もられて」
「えっ!」
「大丈夫だと言ってるだろう!」
「僕これから夜勤でさ、一人で221bに残せないから」
「ちょっと、シャーロック大丈夫なの?!」
心配して駆け寄る、僕に触れようとする。
「触るなっ」
触れる直前に、白い指先はきゅ、と握られた。
「シャーロック!」
「僕は大丈夫だ!一人にしておいてくれ!!!」
「わ、わかったわ、とりあえず上に上がりましょう」
「あがらない!!」
「シャーロック駄目、一人でなにかあったら困るもの!」
の顔がどんどん暗く重くなっていく。
やめてくれやめてくれやめてくれ。
今の僕は何をしでかすか分からない
僕は、君に何をするか分からない。
考えれば考えるほど体が熱を持つ。
答えは分かっている。分かっているがそれを選択するわけにいかない
足に力がはいらずふらつくとが僕の体を支えた。
「っ・・・・!」
「ごめん、だってつらそうだもん。ねぇ上にあがろう」
「休んだ方がいいかな?」
「い、い・・行って来いジョン」
「本当かい?」
「大丈夫だ、何を盛られたか把握している。そのうち症状は治まる。」
「・・・・・・・」
「シャーロックもこう言ってるし、行ってらっしゃい」
ここにいる時間も惜しいと言わんばかりには僕の手を引いてエレベーターへ乗り込んだ。
部屋は最上階。普通の諜報員が泊る部屋じゃない。
普通、なら。彼女のバックは僕も知らないが何かあるらしいし、
そこは関係なくてもここは
「Sirが取ってくれたから、部屋いくつかあるの。一人がいいならベッドルーム使って」
「・・・・」
「ねぇ、シャーロック、凄い汗、なんだけど」
「さ、わるな、と」
「何があったの?」
「・・・・・・・やめろ、近づくな。」
「わかったわ。コート脱いで、ほらちょっと横になった方がいい。顔色悪いし」
一瞬だけ、は唇をかみしめた。
動揺したり悲しんだりする感情を抑えるときにやる癖だ。
それをさせたのはまぎれもなく僕だが、
それをさせざるを得ないんだ。
僕は彼女を暴力的に蹂躙したいわけではない。
コートやジャケットを脱ぎ棄ててベッドに横になる。
考えろ。感情や現象に左右されないように
暗闇の中で崩壊しかけている宮殿を食い止めるために
一人頭をフル回転させる。
遠くでシャワーの音が聞こえはじめた。