シャーロックの部屋のベッドは狭く感じる。
セミダブルだけども、シャーロックが184センチあることも原因だ。
本当は広いベッドでゆっくり寝たいけど家主を床に転がして私だけが一人で眠るわけにもいかない。
シャーロックがマイパレに入れば一人でこのベッドを占領できるのだけど、
何故か私が下で眠る日は、必ずと言っていいほど一緒にベッドに入る
「やっぱり狭いねー」
「文句を言うな」
「上で寝ようかなあ・・・」
「セントラルヒーティングが壊れてるのにか?寒がりの君に一晩耐えられるとは思えない」
「これならジョンと寝た方がいい」
「
!」
「ううん耳元で怒鳴らないでよ」
伸ばされた腕に勝手に頭を置いて横になってるとシャーロックが遠慮がちに背中側から抱きしめてきた
確かに二階のセントラルヒーティングは壊れてるし、体温が低いと言っても、人肌があるのはありがたい。
「何この本」
「陶器の歴史」
「面白くないです」
「別に君のために読んでいるわけじゃない」
際限まで背中をシャーロックにくっつけるとシャーロックが何処からか本をとりだして
私を抱きしめたままページをめくりだした。
絶対、腕しんどいと思うんだけどなぁ
目の前を流れて行く文字の羅列、ゆっくりと聞こえてくる低い鼓動の音、人の体温
眠くならないわけがない。瞼がどんどん重くなっていって、
心地のいいまどろみがやってきた。私は、それに身を任せる。
「おきろ!
!おきろ!!!!!」
ぺちぺちと誰かが私の顔を叩いている。
小さな手、高い声、誰かしら・・・・・・
瞼が重くて動かない。もうちょっと寝かして頂戴・・・・
「
!!!!」
「っ!!!!!!?!??!!」
急に鼻をつままれて目が覚めたら
「・・・・・・・誰・・・あなた・・・・」
目が覚めたら小さな男の子が目の前に座っていた。
くるくるの黒髪、不思議に光る瞳、白い肌。私の隣に寝ていたはずの男はもういなくなっていた
シャーロックの友達かしら
「えっと、シャーロックのお友達?」
「ぼくがシャーロックだ!」
「ん?」
「
おきてくれ!このじょうきょうはまずい!」
「だから、あの」
「ぼくがシャーロック・ホームズだといってるだろう!!!!!!!」
目の前の男の子は5歳くらいだろうか。
シャーロックに憧れてたわごとを言ってる?いやいやだからってなんで寝室にいるのか。
ちょっと待って、ちょっと待って、頭が混乱してきた
「きみだとやくにたたない!ジョンをおこしてくっ!!!!!!!」
べしゃ!と音がして見て見るとシーツにくるまってベッドから落ちた男の子
「・・・大丈夫?」
「・・・・・・・・・・・・・うまくからだがうごかない」
「シーツ巻いてるからじゃない?」
「ふくがない」
「君、裸でここに来たの?」
「きみだってわかってるはずだろう、げんじつとうひはやめろ」
男の子の脇に腕を入れて立ち上がらせる。
くるくるの黒髪、不思議に光る瞳、偉そうな口の効きかた、分かってる、分かってる
「生んだ覚えはないわ」
「いいかげんにしてくれ」
「誰かに産ませたの?」
「いいかげんにしろ!
!!!」
「・・・・・・・・・・・・・とりあえず服がいるわね。Sirなら貴方の服持ってるかしら」
「やめろ!あいつにでんわだけはやめてくれ!!!!」
ぺちぺちと叩くシャーロック?を横目にSirに連絡を入れる。
なんて言ったらいいのか。シャーロックの子どもの頃の服って残ってますか?とか?
なんだか私が変態見たいになっちゃうなぁ
ぴょこぴょこと私の足元で飛んでるシャーロックは正直言って可愛い。
「
!やめろ!
!!!!」
「だってそのままって訳に行かないじゃない?」
「今日はずいぶん騒いでるね二人とも・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつ産んだの?」
説明しなきゃならない人がもう一人起きてきた。
「私の天使が帰ってきた」
「最高に気持ち悪いわSir」
221bには184センチの男が着る服かそれよりちょっと(ここはジョンのために強調しておかなくてはいけない)
ちょっと背の低い男が着る服しかない。
シャーロックが足元でぴょんぴょんととび跳ねるのを無視してSirに連絡したら
満面の笑みでポロの紙袋を持ったSirがやってきた。
部屋に袋とシャーロックを放りこんで15分。
相当苦戦した様子で少し疲れた様子のシャーロックが出てきた瞬間から今まで
Sirはスマートフォンで写真をとり続けている。
「きもちわるいぞ!まいくろふと!」
「そのころのお前は私をマイキーと呼んでいた」
「しね!」
私の足にしがみつく小さな探偵は見た目はものすごく可愛いけれど中身は彼のままらしい。
しかしシャーロックがこんなにもストレートな言葉を使うのも珍しい。
くらいSirが気持ち悪いのだ。
「あー。この調子じゃ事件は無理だな」
「なんだって!?」
「昨日、グレッグから電話があって今朝、君に言うつもりにしてたんだけど・・・・スーパーの冷凍庫から死体が出たんだってさ」
「こんなに寒い時期に気の毒ね」
「いくぞ!」
「「はぁ!?」」