あああああああああああ

「駄目よ」
・・・」
「だぁめ」
「お願いだ。死んでしまう」
「そんなことないわ。」
「きっと僕は死んでしまう」
「・・・・・・・・・・・もう。分かったわよ」
!」
「血液パック新しいの開けてもいいよ」
「そうじゃない!」
「貧血でこっちが死んじゃう」
「・・・・・・加減する」
「嘘つき」
「嘘じゃない」

私を後ろから抱きしめて文句を言う男。
吸血鬼である。お日さまはあんなに高いところにあるのに、本当に吸血鬼なのかしら。
いつもは普通の食事をとり、時々ジョンが病院から買ってくる血液パックを吸い、そして本当に時々私の血を吸うシャーロック
猫で言う、一週間に一度の缶詰ご飯みたいなもの。
ただしこっちもそう簡単に自分の血を提供するわけにもいかない。

「君の香りがする」
「だったら少し離れて頂戴」
「ここにあるのに」
「当たり前でしょう。生きてるんだもの」
「甘い香りがする!」
「糖尿病とかじゃないわ」

いくら問答を続けてももらえないと思ったのか立ち上がって冷蔵庫を乱暴に開けた。
どうやらこの221bには血液を一定期間で変えなければならない難病の人が住んでいるらしく
ジョンはその人の主治医として病院から血液パックを持って帰ってきてる。

政府の力ってすごいわね。
不機嫌そうにパックから血を吸っているシャーロックの頬にいい子ね、と軽くキスしてあげる。

「・・・・・・・本当は唇にキスしてあげたかったけれど、血なまぐさいのはお断りなの」

眉間によった皺がさらに濃くなった。
今日の夜なら、ちょっとだけ、甘やかしてもいいかもしれない。
我慢出来たらご褒美あげなきゃ。
机の上には読みかけの「子犬の飼い方」の本。
飴と鞭は使い分けなくちゃならないらしい