解放してしまえば、簡単なことだ。
それで欲求は解消される。
だが僕はその行為が嫌いだ。嫌悪感を抱く。
そう言う意味では男に生まれたことを悔やむ。

「シャーロック、」

暗闇の中からドアを開ける音との声が聞こえた

、僕は大丈夫だ、だから」
「だめ、大丈夫じゃないもん」

ドアを開けたのだろうが、光は入って来なかった。
全ての電気を消してここへ来たのだろうか。
暗闇の中で気配を消して歩く彼女に気付けるわけがない。
慣れない瞳で彼女の姿を探す。

「シャーロック、貴方が何を飲まされたのか大体分かるわ」

ベッドが沈んだ。
この広いベッドのどこかに彼女がいる。

「誰が飲ませたか教えて頂戴」

シーツの海をが泳いでくる。
獲物を狙う猫のようだ

「やめろ!わかってるならなおさら」
「なおさら?なぁに、なおさら何?」
「っ」

伸ばした膝の上にが膝立ちで立っていた。
シルクのシャツ。僕が何かの折に贈ったものだ。
洗いたての髪の香り。

・・っ」
「だまって、」
「んっ」

吸いよせられた唇に最早抵抗などしても意味がなかった。
精神と理性がバランスを崩す。
が僕の唇を少し舐める。
シャンプーの香りの裏にほのかに香る柑橘系のコロン

「だれに、飲まされたの?」
「言わないの?まぁいいや、後で絶対教えてね」

息が上がる。薬のせいだろうか、それとも見たことのないの姿にだろうか。
「とりあえずこっちなんとかしなくちゃ」
「やめっ・・・触るなっ!」
「口でする?」
!!!」
「そんなに怒らないで、じゃあ手でする。教えて、どうしたらイイのか。」

かちゃかちゃとベルトをはずす音がする。
急いで手首をつかんだが、は笑いながら僕の唇にキスするだけだった。
そっちに意識を取られる間に、彼女は手早く脱がす

「っ・・!!!」
「学生時代もこんなことしたことなかったかも」
「・・・」
「誰かさんがわんちゃんみたいにガッツくから私がリードすることなかったし」
「るさいっ」
「顔真っ赤、余裕なさそう、かわい」
「やめろ、喋るな」

その白い手を汚すのは気が引ける
と思っているのに体はずいぶん順応に動く。
だから嫌なんだ、だから、だから!!!

「っ・・!!!!!」
「シャーロック一人でしないのね、溜まってた?」
「き、みが帰って来ないからだ!」
「凄い、凄い愛の告白ね。」
っ」
「お付き合いするから、その代り絶対、誰に呑まされたか教えてね、お願いよ」

シーツの海にブルネットが広がって赤い口と白い肌が僕の視界を占領した。
後はもう、馬鹿みたいにそれを貪り喰う地に落ちた男のようなものだった。
僕が、この僕が、こんなことを、するなんて。




「ひゃあっ・・・っ!んっ!やぁっ!!まって、も、できなっ!!!んくっ」
「君が、付き合ってくれると言ったんだ」

肌と肌がぶつかる音が耳ざわりだったのに、もう何も感じなくなった

「あっ!んっ!あ、や、そこだめ、だめっ・・んっっーっ!!・・・・・・・・・」
、起きろ、まだ終わってない」

何度も飛びそうになる彼女を起す。
今は何時なのか。もう朝かもしれない。
携帯にジョンやレストレードから連絡が入ってるかも。
でも今の僕にはあまり関係ないことだ。

「しゃろ、ゆるしてっ・・・やぁっ!あっ!あっ!んっ!ふぇっ!」
「君は僕が可愛いと表現したが、今の君の方が可愛いと思う。」
「ふぁっ」
「驚いたな、耳たぶは君の性感帯だったのか?締まったが」
「ちがっ!うぁっ!!ゆっく、りして、やだ、やぁ、ぁっ!」
「っ!!!!」
「んゃあああっっ」

何度目かの絶頂の後のことは全く覚えてない



++++++++++++++++++++++++



「レストレードから10件も連絡があった」
「・・・・・・・・・・」
「僕のせいじゃない」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「君が僕をこうさせたんだぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「わかった、僕のせいだ。僕が悪かった、だからシーツから出て来い
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もう今日は何をする気にもならない。ルームサービスを取ってここで過ごそう」
「・・・・・・・・・ほんと?」

シーツにくるまったまま動かなかった(山)が少し動いた。

「本当だ。僕が嘘をついたことがあったか」
「・・・・・・・・わりと」
「あったかもしれないが」
「お風呂入りたい」
「入れてある」
「ひとりではいるからこないでね」
「・・・・・・・」
「こないでね」
「わかった。けれど君はバスルームまで歩けるのか?」
「・・・・・・・・」

時計を見れば昼。
僕は午後の予定を全ての機嫌を直すために使わなくちゃならないらしい。
とりあえずまずシーツの山から出てきた両腕を首に回させて
バスルームまで連れて行くことから始める。

一週間くらいたってからあのバーテンダーが逮捕されたらしい。
証拠は不十分だったのに、自白があったと。
警察署に自白のテープが届き、肉声検査も行い、逮捕が決定された。
誰が彼女を喋らしたんだ。
バーテンダーに聞いても、けしてそのことについて口を開くことはなかった。