最近、マインドパレスがごちゃごちゃしてきた。
足元に散らばる書類も、空中を浮かぶ凶器も、本棚から溢れた本も
後で片付けようあとで整理しようと思っていて忘れていた。
整頓されている部屋数が少なくなってきた。と足元の本をかき集める。
一時的に保存したデータは消去してもいいだろう。
これは花言葉になぞらえて殺人事件が起きた時に保存した奴だ。別にいらない。データ削除。
これはタロットカードが死体に添えられていた時もの。しかしタロットは暗号にも使われやすい。データは保存したまま本棚へ。
散らばった書類も集める。中を見れば、ジョンのデータが増えていた。
くだらなくていらない物もあったがなんとなくファイリングしておこう。
ああ、またマイクロフトのデータだ。僕は何度もマイクロフトのデータを消しているのにいつの間にかそこにある。
マインドパレスにまで邪魔してくるあいつは本当に厄介だ。
ハドソンさんやレストレードの物もある。そのほかは探せばあるだろうがまぁ別に構わない。もう消去したかもしれない。
犯罪者一覧の辞書。僕が作ったものだ。これはどんどん増えて行く。モリアーティや「あの女」もここに保存されている。
骸骨を片付けてバイオリンは並べて
テーブルの上にはウェッジウッドのティーカップ。
やっと周りが落ちついた。
ソファに座って落ちつく。何かが足りないような気もするが別にかまわない。
何処かにあるだろう。それが何かも分からないが、僕は困らない。

「シャーロック」

誰かが僕を呼んだ。誰だ。

「シャーロック」

女だ。ここには僕以外、人はいない。

「ねぇ、シャーロック」

反響する声がだんだん近づいてきてるような気がする。
僕の宮殿だ。勝手に住みつかれるのは困る。さっさと消去してしまおう。

「シャーロック」
「・・・・・っ!」

ぎぃと扉を押してやってきたのはブルネットの髪

・・・!?」

ゆっくりした足取りでソファに腰掛ける僕に近づいてくる。
薄いブルーのスーツが

「おい!」

スーツの生地がゆっくり薄くなって行っているように見える。
彼女の足取りは止まらない

!なんでここにいる!どうして・・」
「シャーロック、」

僕の前に下着姿でピンヒールを履いた彼女が立った。
甘い声がマインドパレスを崩壊に導く
なんだどうしたどういうことだ!白い指先が僕の頬を撫でて
ゆっくりゆっくり近づいてくる。やけに白い指先がスーツの上から僕の足を、
・・・ああやめろやめろ!



「うわあああああああ!!!!」
「!!!!!!!!!?!??!!!!!」

気がついたらそこは221b
思わず立ち上がれば目を丸くしたがぽかんとした顔で僕の顔を見ている。
ちゃんと服はきてる。当たり前だが。
落ちつけ。どういうことだ

「び、びっくりした・・・・」
「吃驚したのはこっちの方だ!」
「え。何が!?朝からずっと宮殿の整理するから話しかけるなって・・」
「なんで君が!」
「ど、どういうことよ!」
「君のせいだ!!!」
「な、なにもしてないわよ!」

が訝しげに僕の方へ近づいて来たが僕は身を引いた。
彼女がどんどん近づいてくるのに合わせて僕も後ろへ下がる。
ちょっと待ってくれ、頭の整理が、
がんっという衝撃と共に僕が寝室へのドアの前まで迫られていることに気付いた。

「なんで逃げるの」
「逃げてない」

僕はと目を合わせないように足元を見る。
ピンヒールだ。赤いピンヒール。
仕事のために履きなれなきゃと言って最近ずっと履いている。
彼女には少し似合わないピンヒールのパンプス

「何があったの?」
「何もない!」
「ちょっと教えなさいよ!何もしてないのに私のせいとか!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・君が・・・」
「私が?」
「・・・・・・・・・君が宮殿にいた・・・・」
「・・・・・なんで?」

聞きたいのはこっちの台詞だ!ガゼル以外の人物は全部、データとしてファイリングしてあった。
確か多分の物もその中にあったはずなのに!なのになんで急に・・・・

「知らん!君が、君が・・・」
「あなたの宮殿にいた私はなんだったのよ」
「・・・・・・・・し、たぎ姿で・・・」
「はぁ?」
「それを履いてた」
「なに?」
「ピンヒールだ!!!!!」

意味がわからないと言う顔。当たり前だ!僕だって意味が分からない。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・欲求不満なの?」
「違う!!!!!!!」
「いいよ?下着姿で?これはいたらいいの?やってあげるよ?」
「いらん!!!!!!!」
「もしかして踏まれたりする趣味が」
!!!!」
「だってアイリーン・アドラーと勝負したって聞いてるもん。」
「あの女は関係ないだろう!」
「乗馬鞭・・」
「ちょっとは黙ってくれ!!!」

面白がりだしたの肩をつかむ。
にやにや笑う彼女は恐らくもう止まらない。
彼女は僕の手首をつかんで、頬まで引き上げた。
ふわりと笑って目を細める。
こんな顔を見ると彼女が仕事でターゲットを落とす時に使ってるんだろうと
予測できてイライラもする。

「何がお望みなのかしら?ご主人様?」
「・・・・・・・・・っ」

が細い指先で僕の頬をくすぐるように撫でた。
顔に熱がこもる
耐えられずに両手を上にあげた。

「顔が真っ赤よ、ご主人様」
「い、いい加減にしろ!!!」
「だってシャーロックが言いだしたんじゃない」

現実世界だって手に負えないのに、マインドパレスの彼女なんてどうこうできるものじゃない!