朝。
おはようございます。最近、犯罪王に飼われ始めた情報屋、です。
今日は、ジョン・ワトソン医師よろしく、ジム・モリアーティーの観察日記をつけようと思います。
むく、と起きあがると隣に寝ていた彼はいなくなっていて、変わりにキッチンで物音がしていました
隣で寝てることもあれば、私よりも早く起きてることもあれば、そもそも帰って来ないこともありますが
なににせよ、私は朝がとてつもなく弱くて、昼までベッドから起きないことがほとんどだったのに
ジムに飼われるようになってから、やけに規則正しい生活を送るようになりました。

「おはよー。朝ご飯できたよ。」

ちゅ、と軽いリップ音。
半眼で寝ぐせだらけの私の頭をわしゃわしゃと撫でる犯罪王。
彼がわざわざ私を起しに来て、食事を用意するから、私も飼われてる身としてはできるだけ忠実になろうと
努力するようにしているからです。だって死にたくないし。

「・・・・・・はい。」
「起きてる?起きてよー??」
「あさ、ごはんはあまり要らないと何度も言ってるんですが・・・。」
「ああ、そうだったかな。忘れてた忘れてた。ごめんねー。でもクロワッサン焼けちゃったし、
果物とクロワッサンだけでいいから、食べてよ。」

忘れてた?覚える気がないだけだろ。彼は食事によくこだわります。
キッチンには沢山の種類の調味料が並んでますし、材料もこだわりの物を用意するので
まずくはないです。というより、とてもおいしいです。
とりあえずダイニングについて出されたクロワッサンと林檎を頂きます。
今日の紅茶はダージリン。おいしい。
彼はにこにこと笑いながら私が咀嚼する様をしばらく眺めてから自分も食事を取り始めました。

「今日は何をするんですか。」
「んー、特に仕事もないし、買い物行こうか。」
「はい。」

++++

昼。
ゆらゆらと二人でロンドンの雑踏の中を歩きます。
私が死ぬ前に、別の場所へ服や家具を送っていたのをこの間取りに行ったら
洋服の半分を捨てられることになりました。
彼の気に入らない色とか、デザインのものは全て処分。
そんなに外に出ることもないので困りはしないんだけど
あまり減るのも女性としてはいただけない、と言うと
彼が次の日、倍の量の洋服を届けてくれました。
愛が重い。

?どうしたの?」
「いえ。なんでもないです。」

家具はまぁ。捨てられても仕方ない、と思ったんですが
お気に入りのクッションを手違いで一緒に処分してしまって
今日はそれの代用品を探しに家具屋さんへ。

「どんなのだったの?前の奴。」
「大きくて、丸くて、ふわふわしたやつです。」
「抽象的だなぁ。ま、なんでもいいや。好きなの選びなよ。」

家具屋さんで彼はソファに座って私がクッションを選ぶのを眺めていました。
何が面白いんだろう。
途中で、電話がかかってきて外に出た間に最初から目をつけていたものを購入。
暇があれば何かと買ってくれるので、私の貯金が減ることもなく、なんだか申し訳ないので
隙を見て、自分の財布を取り出すタイミングを計らないといけません。ジムには及びませんが私だって稼いでいます。
紙袋に二つ、入れてもらって店を出ると、彼はまだお話中でした。
きちんと、監視カメラのうつらない死角に立って。
都市伝説ですが、イギリス政府にこの監視カメラを監視してる?男がいて
自由自在に操ることができるらしいです

「ええー。買っちゃったの。」
「買っちゃいました。」
「僕、ちょっと仕事ができちゃった。帰れる?」
「帰れますし、私も用事があるので、丁度良かったです。」
「まだ何かあったの?」
「下着類を買いに行きます。」
「僕も一緒に!」
「やめてください!さっさと仕事に行ってください!」

彼はぶつくさと文句を言いながら丁度、迎えに来た高級車に乗り込んで行きました。
下着ぐらいは自分で選ばせて下さい。お願いします。できたら死んでください変態。
紙袋を揺らしながら私はランジェリーショップを目指しました。

彼氏と一緒に楽しそうにしているカップルを横目に、彼と私の関係はつくづく良くわからないなぁ
と思いながら自分のサイズを眺めつつ、悲しくなった昼下がりでした。