気がつけば朝。
この椅子の上で目が覚めることはしょっちゅうあることだけど、未だなれません。
首を回すと嫌な音が脳内で成りました。この行動も体にはあまり良くないそうです。
というより、ここ一週間くらい体を横にして眠ってない気がします。
目の前には携帯が一台。使い捨ての安い奴です。

我々は、一人の依頼人に対して一つ携帯を持ちます。仕事が終わったら捨てられるように
昨日の(正確には今日の)夜中3時にジェームズ・モリアーティーにメールを出しました。
彼の興味をひくか、彼に飽きられるかで選べと言われれば
前者を選ぶのが正解でしょう。どちらにしても殺されるでしょうけど。
今は、何時・・・と、スリープモードになっているパソコンを動かそうとエンターキーに手を伸ばそうとすると
携帯の着信音が小さくなりました。。

【是非、一度会いたいな。】

仕事の依頼じゃなかったようです。
ということは、彼の依頼人が、私・・もしくは私の関係した情報を探している、ということでしょう
困りました。とても、困りました。
絶対に、絶対に!会いたくないです!

【どうしてー?いいじゃん。お茶しようよ】

どうして、こう軽いんでしょうか!!!
こちらは完全に遊ばれてるようです・・・困りました。
腹の探り合いは嫌いではありませんが、相手が相手です。
地獄行きの列車に強制的に乗せられるのはごめんです!
呼び出されて殺されるオチが見えています。死にたくないです!

【・・・・どうして?】

どうしてって!どうしてって貴方が犯罪王だからですよ!
貴方の信者には有数の暗殺者がついてるでしょう!

【じゃあ、僕がこれからずっと仕事をフォローしてあげるよ。だから】

・・・・・・・・それは。まぁ・・・安泰かも、しれませんが・・・
・・・・・・い、いや!駄目だ!騙されるな私!相手は犯罪王です!
彼が味方になれば心強いですが、最後は飼い殺されます!テムズ川には浮きたくないです!
なんだか・・変なストーカーのような感じがします・・・何を言っても折れなさそうです

【わぁお。なんでなんで?僕は怖くないよー?】

怖いです!すごく怖いです!

【じゃあ、ゲームをしよう。僕が君を見つけられたら、僕と遊ぼう。仔猫ちゃん。】

完全に彼のペースに呑まれました。
我々は、戦闘能力がない分、警戒心が強く、姿を現してはいけなく、
逃げ、隠れ、欺いて生きていくのが常です。
バックが強ければ、強いほど、大きな組織であればある程
他の勢力から消される可能性が消える分、
バックの組織から消される可能性が高くなります。
彼と手を組めば、安心ですが、その分リスクが大きすぎて想像もできません。
この間、中東で皮をはいで捨ててあった死体は彼関係らしいですし。

【じゃあ。僕が、君を、さらいに行くよ。待っててね】

私の人生が終わりを告げるようです・・・・・・
殺される前にデータのバックアップとクラッシュを行わなければなりません・・・。
ああ、ここの隠れ家、気にいっていたのに・・・・
できるだけ、逃げる用意をしながら、ハンガーゲームの始まりです。
黒い瞳の悪魔から、赤い猫は逃げなければならないのです。