朝、起きる。今日は作りかけのゲームが最終段階まで来るはずだ。
明日の朝には、32歳女性一名、29歳男性一名、6歳の女の子の悲惨なニュースが流れるだろう。
ごろん、とベッドから上がる気力もなくてシーツを手繰り寄せる。
眠いなー、特にすることもないからこのまま寝てよっかな、なんて考えていたら
携帯のランプが点滅してることに気付いた。
携帯に手を伸ばすとメールが一通

【初めまして、ジェームズ・モリアーティ様。連絡を、とのことでしたので失礼ですがメールで
返答させていただきました。いかがなさいましたか?】

僕はこのメールを読んで口角が上がるのを止められなかった。
止める気もなかったけれど。
大体、携帯やパソコンのアドレスや番号をハッキングすることはとても簡単。
それこそ、あの英国政府の氷の男のアドレスも、シャーロックの番号も自由自在だ。
だけど、この携帯は違う。
この携帯はそもそも誰かと連絡を取るために持っているものじゃない。
僕が仕事以外で使うためのものだ。
もしくは僕が、仕事のために使うものだ。
僕は誰ともこの携帯で連絡を取らない。
仕事用の物は他に4台ほど持っている。
送られてきたアドレスに返信をうつ。

【是非、一度会いたいな。】
【残念ながら、会うことはお断りします。】
【どうしてー?いいじゃん。お茶しようよ】
【会えません。】
【・・・・どうして?】
【情報屋だからです。】
【じゃあ、僕がこれからずっと仕事をフォローしてあげるよ。だから】
【私は、ジム・モリアーティーが嫌いなんです。】
【わぁお。なんでなんで?僕は怖くないよー?】
【いいえ。私は、ジェームズ・モリアーティーが嫌いで、貴方が怖いです】
【じゃあ、ゲームをしよう。僕が君を見つけられたら、僕と遊ぼう。仔猫ちゃん。】
【・・・・・貴方のお得意の手には乗りません。乗れません。勝てない試合はしません】
【じゃあ。僕が、君を、さらいに行くよ。待っててね】

僕はお気に入りのスーツに袖を通して、
昨日、送られてきたメールの返信をする。

【犯人は見つかった。情報は金と引き替えに。4日後だ。金額は君に任せるが
僕を絶望させないでくれよ。 JM】