朝起きる、パソコンのスイッチを入れる。
お湯を沸かして紅茶の準備。
冷蔵庫を開けてデニッシュをオーブンへ
パソコンの起動音がなって、パスワードを入れる。
お湯が沸いて、デニッシュが焼けた。
ポットにお湯を入れる。砂時計をひっくり返す。
デニッシュにバターを塗って、3分。
紅茶をマグに淹れて、パソコンの前に座る。
今日も可愛そうな子ヒツジから沢山の『お願い事』が届いてる。
【どうかどうか、妻を殺して下さい。】
【あの女が悪いんです。】
【夫に仕返しをしてやりたいんです。】
【子供が、】
【親が、】
えとせとら、えとせとら。
しゃく、とデニッシュをかじるといい音が鳴った。
面白くないゲームばかり。だけど僕が作ればちょっとはマシなストーリーになるだろう。
それからもう一つ。
【ある情報が盗まれました。公的機関には言えない内容です。どうか、犯人を見つけてください】
宛名は誰でも知っているような会社のものだった。
基本的に、人間が作ったものは、人間が壊すことができる。
そして、犯罪は横のつながりが重要だ。
すぐに裏切る表の人間よりずっとずっと道徳的な世界だと思う。
僕は、メールを立ち上げて
ある情報屋にこの事件についての情報を求めた。
+++
午後。冷蔵庫の中身が乏しくなったからスーパーへ買い物に行く。
途中でジョニーボーイとすれ違った。
今日はシャーロックと一緒じゃなかった。
様子からするとデートかなぁ。
彼の相手を拉致して爆弾でも取り付けて送り返したら楽しそうだなぁと思ったけれど
今、作ってる物語が多すぎて今日はやめておこう。
スーパーで適当に買い物を済ませて帰路につく。
パソコンの画面には「you gat maill」の文字
今朝送った情報屋からだろう。あいつらは外に出ないし、隠れ家も大量に持ってるから
追われていようと、餓死しそうだろうと、返事は早い。
【その会社にハッキングした犯人は分かる。証拠が一つもない。データーに侵入した形跡もない。
だから、犯人が分かる。そいつについて分かっていることは、ひとつ。女だ。】
訳がわからない返信が寄せられた。
足跡を残さず侵入することは勿論、簡単なことじゃない。
たとえば、ハッキングさせた、と勘違いさせることなんかはできるけれど。
【それは、誰だ?】
メールの返信。数秒後にまたメールの受信音
【Red Cat】
何それ。聞いたことのない名前。
ただし、聞いたことのない名前が無能かと言えばそうとは決めつけられない。
名前が有名でなければないほど腕がいいということもある。
実際、僕も僕自身の名前が表に出たのはシャーロックのせいだ。
僕はその猫にあてて、ある掲示板のソースにメッセージを送る。
腕がいいなら、気付くだろ。
キッチンに戻って、冷蔵庫の中身をそろえた。
その日は結局、その赤い猫から返信は無かった。