今朝、大学の門をくぐった時点でおかしかった。
芝生の上に並べられたジャック・オ・ランタン
馬鹿げた衣装に身を包んだ学生。
中には教授までもが仮装している。
今日は10月31日。ハロウィンだ。
ただの馬鹿騒ぎする日。僕が遅くまで大学に残れない忌々しい日。
残っていてもいいが、実験道具がパーティーの装飾に持って行かれ
実験らしい実験ができないからだ。
ハロウィンとはケルトの祝いで、秋の収穫祭、または悪霊を追い出す意味を持つ。
イギリスやアイルランドなどアングロ・サクソン系諸国ではよく祝われているが
今となっては、宗教的意味なんか持ち合わせていない。

「だからって君までなんなんだ!!!!!そのスカート丈は!」

今夜、この大学でハロウィンパーティーがあるのは2週間も前から
廊下に貼られたポスターで知っていた。
それからほとんどの学生が参加することも、また彼女が参加することも知っていた。

「え?だって今日、ハロウィンだよ?」
「知ってる!!!!!!!!」
「あかずきんだよ?」
「見れば分かる!!!!!!」
「なんでそんなに怒ってるのよ」

が歩けば、スカートが揺れる。
チュチュがふわふわと広がって、その

「短い!!!!!」

「だよねー・・それは思ったんだけどさ。ナースは去年やっちゃったし、
警官は友達がするっていってたし、アリスっていう歳でもないし・・かわいくない?」
「かわ・・・・」
「いい?」
「そいう問題じゃない!!!」

ぴょこぴょこと厚底の靴で動く
スカートが揺れて、周りの男子学生が立ち止る。
僕は思わず彼女のスカートの端を抑えた。

「その!格好で!!」
「もっときわどい格好してる子いっぱいいるしー」
「だからといって君がやっていいことにはならない!」
「大丈夫だよー色気出ないからー胸がねー残念だからー!」
「そっ!ういうことじゃない!!!!!!」
「あ、やっぱりシャーロックもそう思ってたんだ・・・・・・君の手腕にかかってるんだけど
期待できなさそうだしね!」
「ーっ!黙れ!!!!とりあえず黙れ!」
「そんな怒らないでー」

僕はの腕を取って、研究室へ入る。
中は、経過を観察中の実験道具以外はほとんど持って行かれていて、がらんとしていた。

「とりあえず、パーティには出るな!」
「えええええ」
「魅力が無い君でも馬鹿ならひっかかる」
「その理論で行けばシャーロックも馬鹿だけど」
「違う!」
「心配してくれるなら、一緒にパーティー出ようよー」
「いやだ!」
「ドラキュラとか似合いそう、肌白いし。」
「煩い。」
「授業も終わって、パーティーまで後2時間はあるし、仮装しよ」
「嫌だ!」
「じゃあ私はパーティーでるから」
「駄目だ!」
「もー浮気とかしないから、馬鹿にはひっかからないから。ひっかけるけど」
「!?」

赤頭巾の格好をした
腕にはバスケットの代わりにジャック・オ・ランタンの形のバスケット。
中にはもう既にお菓子が入っている。

「・・・・・Trick or Treat」
「パンプキンのクッキー焼いて来たんだけどね、ロッカー置いてきちゃったの」
「君たちのルールで行けば、いたずらしていいんだな」
「・・・・・・パーティーまでには解放してくれる?」

抱き寄せても顔色一つ変えないにいら立つ。
自分ばかりイライラさせられて、顔色を変えて、冷静さを失っている。

「・・パーティーに出る気力があれば」
「ここ、実験室だよ?」
「知ってる。」
「先生、来ちゃうかも」
「ここの部屋の担当は今日は出張だ」
「備品、取りに来たり」
「全て持って行かれた」
「・・じゃあ、安心だね」

せいぜい、首筋にきつくキスマークを残すぐらいしか
僕にとれる手段は思いつかなかった。
この飛びまわる猫に首輪をつけられればいいのに!