「えーっと。」
「つまり、大学時代つきあってました。」
「あ。うん・・・・信じられないけど」
「ですよね。当時、相当「好き物」だと・・・っ!!!」
「・・大丈夫?」
思いっきり踏まれた足が痛くてちょっと涙出た。
あの後、マイクロフトからの連絡もあったらしく、俺の犯人疑惑は解かれ、彼女とジョンが住んでいるという
フラットにお邪魔した。部下からの電話もマイクロフトからの連絡もない。
とりあえず、あの人が本気で俺をシャーロットに合わせたくなかったら、ベーカー街に近づく前に何かと理由をつけて近づけないだろう
「とりあえずさ、俺の部下が明日の朝にはイギリスに着くからさ、今晩は止めてもらえないかな」
「僕はいいけど・・」
「カウチでいいよ。毛布あれば寝れる」
「凍死しろ」
「何をそんなに怒ってるんだよ」
「怒ってない!」
怒ってないはずない。
シャルは立ち上がってキッチンの方へ行ってしまった。
机の上には実験道具。
あの白い細腕で危険な実験をまだやってるのか
「・・・ホントに付き合ってないの?」
「付き合ってないよ・・」
「別に怒らないけど」
「本当だよ!たまたま、家賃折半の相手が彼女だったんだ!」
「じゃゲイ?」
「違う!」
「俺、偏見ないよ?」
「僕だってない!いや、違う!!!なんで、シャーロットを知ってる人は
『付き合ってる』かそうでなかったら『ゲイ?』って聞いてくるんだよ!」
「そんなの見てたらわかるだろ」
シャーロットは意識の半分以上をマイパレに持って行ってるらしく、
こちらのことは家具かなにかだと思っているようで、
フラスコをゆらゆらと揺らしている
「なんらかの愛がなければ、あいつに近づこうなんて誰も思わないからさ」
「・・・・・・・なるほど」
「好きじゃなかったら、あいつの事を真剣に知ろうとは思えないだろう?」
「じゃあ、僕らの関係は」
シャルが、本当にこの人に大事にされて、よかったと思った。
「友情だ」
これ以上ないくらいカッコいい友人じゃないか。シャーロット
+++++
夜中までジョンシャーロットで飲んで
日付がわかって少したってからお開きになった。
彼女が少し眠そうな顔で部屋に引っ込んでから、2時間ぐらい経ったか
俺もカウチを拝借して毛布にくるまっていたんだけど、人の気配と視線を感じてゆっくりと目を開ける。
とりあえず殺気は無い。殺す気はない。つまり殺さなくていいってことだ。なんて一瞬よぎったけれど
ここはイギリス政府の中で3場目ぐらいに安全な場所だ。多分
「・・・・・・シャル」
「・・・・・・・」
思った通り、シーツおばけが塊になって目の前にあった。
俺の寝顔を覗きこんでいたらしい。
「どうした。」
体を動かすと、毛布の隙間から冷たい空気が入り込んで
やけに目が冴えてしまった。
「・・・・君はどうして僕の所へ帰ってきたんだ」
「・・・・・・」
「事件の現場であったからか?あんなの、理由をつけて、どこにだって行けたじゃないか」
「・・・・シャーロット」
「君は、どうして、」
「シャーロットは、俺に会いたくなかったのか?」
暗闇の中でブルネットが小さく揺れる。
彼女は「僕のところへ」と言ったがそれはつまり「僕なんかのところへ」だ。
「俺は、こんなにもシャーロットに会いたかったのになぁ」
「・・・・・・・・・・」
「でも、4年も、帰って来れなかった。だから、別にいい。別れたいなら、それで。逆に、4年も縛って、悪かった。」
「違う!」
青色の瞳が、月の光を吸いこんで、七色に光る。
綺麗な、瞳だ。
「僕は、」
「うん」
「・・僕は」
「・・・・・うん」
「さ、みしかったんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・うん。俺も」
この世にこんなに可愛い人がいるんだろうか。
大学時代からずっと思ってたけどさ。
「・・・・・
」
「・・・・・・・・・ん?」
「何を笑ってるんだ!!!!」
「んんー・・今のはキスを強請るところだったから」
「そんなことなかった!笑うな!」
「笑ってない」
「笑ってるだろ!」
「分かった分かった、じゃあキスしていい?」
「う、あ、いやだ!」
なんて、聞いてやる気もないんだけど。
シーツお化けを引き寄せたら、それは、やっぱりお化けなんかじゃなく
少しばかり体温の低い、可愛い可愛い、大切な人。
引き寄せて、キスして、頭を撫でて。
恐る恐る背中に伸びてきた腕が俺のシャツを握りしめて。
ああ、可愛いなんて。
馬鹿みたいだ。馬鹿だけど。どっかの英国政府ぐらい馬鹿だけど
「で?俺のお姫様は今からベッドに上がるのを許してくれるのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・駄目だったら一人さびしく寒い中カウチで寝るけど」
「何もするなよ」
「しないしない」
「じゃあ。いい」
よっしゃ、なんて思ったのが間違い。
4年ぶりの可愛い人を抱きしめて
何もせずに眠るなんて、無理。しかもシャーロットはシャーロットで無防備に安心しきって
すり寄ってくるし。死ぬ思いをした夜だった