二階でスウェットとパーカーに着替えて、ベッドに横たわる。
携帯を触りながら久しぶりにベッドに横になったなぁと実感。
最近はロクな睡眠を取ってなかった。ソファとか移動する車の中とか
ターゲットの止まってるホテルの向かいの汚い空き家とか。
ちょっとずつ体の力が抜けて着て、ゆるやかな睡魔がやってきて。
ずきん、と右肩がいたんだ。そんなに酷く痛いわけじゃないけど
噛み癖って躾直すタイミングを逃すと駄目って聞くし
ああ、でもシャーロックは人間で・・・
人間だから・・でもドラゴンで・・・
眠くって、思考が回らない。
ごろんと転がって布団を引き上げる
ジョンがご飯作ってくれないかなーなんて思いながらウトウト



と、していたところでシャーロックが上がってくる音がした。

「・・・・・・・」
「・・・駄目よ、シャーロック」
「・・・う」

扉の向こうではどうしようか迷ってるようで入って来ない。
甘やかしちゃ駄目、と肩や首が痛むたびに思うのに、
なかなかできないもので。
でも今日は、まともな相手はしてあげられそうにない

「大丈夫だ、痛いことはしない」
「大分と、問題ある発言よシャーロック」
「どうしたらいいんだ!」
「・・・・・・・もういいよ、どうしたの?」

がちゃと扉を開けるシャーロック
女性から許可がない限り部屋に入らない辺り
家柄がいいのがうかがえる
ドラゴン・・・・・だけどね・・・。

「僕も一緒に・・」
「・・・・・・噛まない?」

この間、夜中にやってきてベッドにもぐりこんだと思ったら
そのまま後ろからホールドされてずーっと朝まで甘噛みされた。
お互い眠りかけなもんだからシャーロックは噛んだまま眠っちゃってて
その時の傷はいまだにうっすら残ってる。

「・・・・噛まない・・」
「いいよ、その代り、起こしてね。」
「わかった」

その無表情の中にきらきらした瞳を浮かべるのやめて頂戴
いじわるしてるみたいじゃない。
ガウン姿のシャーロックはそっと部屋に踏み込んできて、ベッドにもぐりこんできた。
やっぱり、後ろからぎゅと抱きしめられる。
彼の頭が首筋に充てられて、びくっと思わず体が動いた

「噛まない」
「・・・・ごめん、ちょっとびっくりした」
「ジョンに、教えてもらったんだ」
「何を?」

ちゅぅと情けない音がした。
その音がなんなのか分からないほど、私は子供でない。
これこそ一大事と体を持ち上げようとしたけれど、シャーロックがベッドに引き戻す

「ソファで寝てたんだろ?体に良くない。あとは床の上だ。古くて軋むやつ、雨漏りが酷かったんだな」
「う・・ああああああの、シャーロック、あの、今」
「なんだ。ジョンが噛まなくていい方法を教えてくれたんだ。
これだと君は傷が増えないし、僕も僕の匂いがつくから安心だ!」
「・・・・」

ジョンの馬鹿野郎おおおおおおおおおおお
と心の中ですごく叫んでおいた。
ベッドに我が物顔で横たわってるシャーロックと
呆れた顔(だと思う)でそれを見下ろす私
そっとシャーロックが私の頭の後ろへ腕をまわした。
これは

「ちょ、っとまった!」
「なんだ、」
「・・・・・・・・シャーロックってさ・・・」
「?」
「人間、をその、」
「恋愛対象に見る。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、おお」
「そもそも僕も兄も父も混血だ。僕らは純潔を守り続けると生き残れないことを知ってる」
「そ、そうか」
は、僕じゃ嫌なのか?」

嫌、とは言い切れない。
ただ混乱しすぎて、どうしよう、家でかってた犬(ドラゴン)に手を噛まれてる!現在進行形で!
甘やかしてた結果がこれだよ!

?」

「・・・・・・・・ちょ、っと混乱してまして」

ちょっと距離を置いてベッドに横たわる。
いや、横たわるべきじゃないんだろうけど、だって、でも、元?ペットだし
どうすりゃいいんだ・・・どうしたらいいんだ!!!

「・・・・・・・君は僕の配偶者になるんだ!」
「へ?」
「僕は他の人間に興味を持たないし、他の種族に興味を持たないから、あいつが気に入ったなら
キチンと手に入れておくように言われてる。」
「・・・・・・・・・・・・・・あいつって?」
「マイクロフト」

上司が部下(私)を売ってどうする。
しかも相手は弟だよ。
でもはっきり、嫌!って言えない。
あれ?私、シャーロックの事、最初はペットと思ってて、それから家族になって
かわいくて、大好きで、綺麗で・・・
それで、それで・・・・?もしかして・・これって・・・・

・・・顔が赤い、脈拍も早い、」

どんどん顔に熱が集まる感覚。自分の気持ちに気付いたら気付かないふりなんか難しい
がばっ!と起きて、自分の手でシャーロックの瞼を強制的に閉じる。
シャーロックは何事かとちょっと暴れた

「・・・・・っ!」

お返しに私が唇に噛みついておいた。
彼の眼を抑えたまま距離を取ると口だけにんまりと笑った。
ドラゴンの花嫁って・・・・花嫁修業なにすりゃいいんだ・・・・