何かの気配がしたのは明け方だろうか。うっすらと部屋が見えるくらいの時間。
ベッドのわきに、誰かいる。
身体中に緊張感が走る。誰だろう。何だろう。
寝がえりをうつふりをして枕の下に用意した銃を握る。
そっと、薄眼を開けて見ると、ベッドを背もたれにして、見なれない男性が座りこんでいた。
毛布にくるまって。
「・・・・・・・誰・・・?」
「・・・・・!」
その体は私の声に反応してビクと動く。
くるくるの黒い髪の毛。体の力を抜いて、そっと体を浮かせる。
「シャーリー?」
「・・・・・・・・」
今は何時かわからないけど、シャーロックがそこに座りこんでいた。
私はぼすん、とベッドに戻る。起きあがって、話を聞くべきなんだろうけど
もう眠くて、眠くて。体は動かなかった。
「一人、じゃ眠れなくて・・。」
「・・・・・・・・・あー・・・最近・・・ずっと・・一緒に寝てたもんね・・・。」
「・・・
は、僕がドラゴンでも、いいのか。」
「・・・・んー・・・?どういうことー・・・・?」
「嫌いに、ならないのか・・・・だ、騙してたってことだ。」
「・・・・・・・そんなこと気にしてたの・・・・・?大丈夫よ、ジョンも私も・・・そんなこと思ってないわ・・・」
ごそ、と毛布の塊が動いてベッドの脇に座った。
重みで少し体が傾く。
上りきってない太陽の光でうっすらとシャーロックが見える。
「・・・・ほんとに・・・?」
「ええ・・・・だから・・気にしなくていいのよ・・・」
「・・・・・・そうか。」
「・・・うん。」
シャーロックが私の顔を覗きこんでいる。
起きないと、なぁと思うけれどぼんやりして、駄目。
何とか腕を持ち上げて情けない顔したシャーロックの頭をわしわしと撫でる。
「でも・・・もう・・齧らないでね・・・。」
「・・・・・・・善処する・・・・。」
「それは答えになってないわ・・・・・・・」
「・・・・・約束はできない・・」
シャーロックはうつむいて、どんな表情をしているか分からないけど
なんだか二カ月面倒を見ていたからか、
母性本能をくすぐられる行動だ。
もとより動物好きだし。
あれ?動物でいいのかな・・・・
「一緒に寝る?」
「・・・・・・・いいのか?」
ちょっとだけ目に力が戻ってきらきらしてる。
やばい、かわいい・・・ああ・・・眠い・・・・
でもその、人型だと色々と問題があるわ・・・
「省エネモードだったらいいよ。」
と、声に出したつもりだけれど、眠くて眠くて、ちゃんと喋れたかどうか定かではない。
しばらくして入り込んできた体温に、さらに安心しちゃって、
そのまま意識を手放した。
「・・・・。」
でも、消えゆく意識の中で確かにシャーロックが私にキスしたのははっきり分かる。
柔らかくてふわふわして、なんだか幸せだな―なんて動かない頭で考えた。
次の日、シャーロックがいないことに気づいて、めったに訪れない私の私室に来て、
ものすごくものすごく遠慮がちに私を起したジョンの顔と言ったら
表現するのはもったいないくらい面白い顔をしていた。
ジョンが私の隣を指差して、私は、驚きとため息を同時に体験する。
睡眠不足で痛む頭を抱えて、枕を握る
「シャーロック!!!!!」
ベッドに横たわってる男を見て、枕を握って叩き起こした。