「ヘイミッシュはサンタさんに何をお願いするのかな?」
「ひみつー!」

この会話、今日で4度目である。



「どうしよう・・・・」
「なんだ。」
「クリスマスよクリスマス!サンタさんに何頼むのか分からない・・」
「コートとマフラーは用意しただろ」

ツリーの下にはブルーのリボンで綺麗に包装されたプレゼント。
中にはヘイミッシュの新しいコートとマフラーが入っている。
子供は気がつけばどんどん大きくなっていて
服も靴も次々用意しなきゃならない。

「ジョンはヘイミッシュにテディ・ベアを用意してた」
「ああー人形は駄目か・・サンタさんどうしようか、」
「何故ぼくにきく。」
「シャーロックサンタさん。」
「うるさい」
「推理して探偵さん。」
「・・・・・・・ヘイミッシュが欲しいものなんか見ていれば分かるだろう。」
「わかるの!?」
「ああ、」

そういってシャーロックは紅茶を一口。
子供の興味なんてころころ変わるのに
まま!と呼ぶ声にその話は中断してしまった。

「・・僕が用意しておく」

だけど小さく付け加えられた言葉に思わず彼の方を見てしまう。

「なんだ」
「や、何でもない!」

もうすぐ、クリスマスがやってくる!



クリスマス・イブは例年通り、221bでクリスマスパーティ
今年は小さな男の子も加わって大騒ぎだった。
レストレードからはおもちゃの拳銃
(男の事言えばこれしか思いつかなかったらしい)
ジョンからはテディ・ベア
(テディ・ベアがテディ・ベアを持ってきたんだな、と真顔で言ったシャーロックは殴られていた)
モリーからは手袋
(ヘイミッシュは早速、はめてありがとうってにこにこ。 それに顔を赤くして無言で首がちぎれそうなぐらい頭を振っていた)
ハドソンさんからは手造りクッキーとチョコレート
(食べていい?食べていい?と聞くヘイミッシュに「遅いからだめ」なんて事は言えなかった)
Sirから届いた荷物は普通のパズルとミルクパズル
(これって難易度高くないか・・・って思ってたらシャーロックも同じくらいのときに貰ったと言っていた)
10時を過ぎたあたりでパズルをしていたヘイミッシュが小さく揺れ始めて

「ヘイミッシュ寝ようか?」
「や。」
「でもヘイミッシュが寝ないとサンタさん来れないよ?」
「・・・・ねる・・」

抱き上げて二階へ連れて行く。
眠いけどテンションがあがっているヘイミッシュはパジャマに着替えさせる間も
ぴょんぴょん跳ねまわっていた。

「さんたさんくるかな?」
「もちろん。ヘイミッシュとってもいい子だから」
「さんたさんぼくのほしいものわかるかな」
「きっと知ってるはずよ。」
「・・だといいね・・」
「そうだね。」

毛布を首まで引き上げて、頭を撫でていると、瞼がゆっくり下がって行く。

「おやすみ、ヘイミッシュ、だいすきよ」
「・・・うん、ぼくも、すき」

ちゅ、とおでこにキスして部屋を出ようとしたらやけに背の高いシルエット

「寝たか。」
「うん」
「小さいな。」
「かわいいね」
「・・・・・そうだな、」

ぶっきらぼうな答え。あなただって可愛いよ。
ついでにシャーロックにもキスしてあげるとぱちりと目を見開いた。

「下で呼んでる。いこ」
「・・・ああ。」

今日、救い主が生まれた。




「まま!まま!!さんたさんからぷれぜんときてる!!!!!」
「っ・・へ?」

ベットの中でぬくぬく眠っていたらヘイミッシュがベッドによじ登ってきた。
シャーロックはいつから起きていたのか、読み掛けの本を読んでいた。

「サンタさん?」
「さんたさん!!!!」

ヘイミッシュは私の足に座って、小さな包みと四角い包み紙を掲げる。
私は上半身だけ起こして包み紙を見た。
それからシャーロックを見ると、彼はつまらなそうに文字の羅列を追っている。

「開けてみて、」
「うん!」

ガサガサと包み紙を開けて行くヘイミッシュ。

「ずかん!!!!!!」

四角い方は前篇カラーの図鑑だった。
ヘイミッシュの瞳はきらきら輝く。
私がそれを手に取ってぱらぱらめくっている間に、
ヘイミッシュの手は次の小さな包み紙へと移動していた

「あっ!まま!さんたさんぼくのほしいものしってた!!!!!」
「・・・・・よかったな。」

シャーロックが小さく笑いながら言った。

「うん!」

ヘイミッシュの小さな手には、小さなルーペ。
探偵の子供は、探偵だったか。