「じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
ジョンがジャケットを手に、扉を押した。
シャーロックは事件がなかったことですねてソファの上でだんまりだ。
私は持っていたマグカップを机に置いて、玄関まで見送る。
「、がんばって。」
「・・・・・が、んばる。」
相談した手前、頑張らないとは言えなかった。
一気に、顔が熱くなる。
ジョンは笑いながら寒空の中、ロンドンの町へ出て行った。
なんとか顔の熱を冷ましてから部屋へ戻る。
シャーロックは動かない。
「シャーロック、ご飯作るけど、何か食べたいものある?」
「・・・・・・・・・・。」
冷蔵庫を開けると、豚の生首、えび、ミルク、たまご、きのこ、手首、めだま
と選り取り見取りだった。
エビの入ったパックときのこを取り出して、冷蔵庫をしめる
確かパスタがあったはずだ。今晩はオリーブオイルでガーリックと海老のパスタでいいだろう。
鍋をとりだして水を入れていると
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・どうしたの?」
シャーロックが背後からひっついて来た。
背中から回された手がぎゅう、と抱きしめる。
ごとん、と右肩に頭が預けられた。
なんだか、怒られた子供が反省しているかのようにも見えるな、なんて思いながら
私は黙って動きにくい体を動かしながら料理の準備にとりかかる。
シャーロックは離して、と言えば離れたがしばらくするとまたすり寄る。
まるで猫みたいだった。
そんなこんなで夕食の時間になった。
シャーロックは事件の間、何も口にしない。
だからなのか、反動したように事件がない時はよく食べる。
味はどうかと聞くと、何も言わなった
個人的にはおいしいと思うんだけど。
テレビでバラエティーを横目に食事を続ける。
食べ終わってから彼は小さく「悪くなかった。」と呟いた。
と言うことはつまりおいしかったと言うことで
自然と頬がゆるんでしまう。
++++
「お風呂先に入ってもいい?」
「ああ。それより!これは何が面白いんだ!なんで笑ってるんだ!こんなにくだらないばかげた会話に!」
「そういう、ばかげた会話を楽しむ番組だから。」
シャーロックは私の見ていたバラエティーを本当に面白くなさそうに見ていた。
シャワーを浴びて髪の毛を乾かす。
ちょっと熱いからキャミソールとショートパンツだけでドライヤーに手をのばしたら
がちゃ、と
「・・・・・・あ、」
「・・・・・・・・」
シャーロックが入ってきて、シャーロックが出て行った。
その差、きっと一秒満たない。
キャミソール姿でもダメならどうするんだよ・・・。
なんて思いながら髪の毛を乾かす。
バスローブをはおって共有スペースに行くと、シャーロックが固まっていた。
「静かになったから出たと思ったんだ。」
「うん、別にいいよ。」
「覗こうとしたわけじゃない!」
「うん、だから別にいいよ。全裸だったわけじゃないし。」
「・・・・・・・。」
「それとも一緒に入りたかった?」
「違う!」
と言って彼は立ち上がりバスルームへ。
しばらく、本を読んだりワインを飲んだりぼんやりしていたら
バスローブ姿の彼が帰ってきた。
頭が生乾きである。
「シャーロック、」
「なんだ。」
「頭、生乾きだけど。」
「知ってる。だからと言って困ることはない。」
「いや、困るから。風邪引くから。ちゃんと乾かしなよ。」
「面倒だ。」
と、短い会話を交わしていつもの黒い一人がけのソファに座る。
仕方ないので洗面所からドライヤーを持ってきて、近くのコンセントにつなぐ。
立ち上がって逃げようとしたところを座らせ直してスイッチを入れる。
「っ・・・いい!」
「よくない!風邪ひいたらひいたでめんどくさいの!」
「君は困らないだろう!あつい!」
「あつくない!」
ごー、という音と熱風が彼のくせ毛に当たってはじける。
しばらくすると静かになった。
諦めたようだ。
シャーロックの髪の毛は細くてふわふわしている。
まるで大きな猫を撫でているようだ。
「シャーロック?乾いたよ。」
「・・・・・・・・・ああ。」
「眠くなった?」
「・・・・」
ぼんやりとする彼。
呆れる私。
確かに、人にドライヤーで頭を乾かされると、眠くなるよなぁ。
時間も日付を越えそうな時間だった。
「寝る?」
「・・・・・・・ああ。おやすみ。」
彼は立ち上がって自分の部屋を目指した。
私はドライヤーを洗面所に戻してはたとする。
これは、いつもの夜とかわらない!ジョンが居てもこんな感じだ!
せっかくジョンに相談したのに、何もしてないじゃないか!
・・・・・何かする気はなかったけれど!もっと甘い空気とか!!!!
鏡に映った自分を見つめて、意を決した。