新学期はせわしない。
城への道は、いくつかある。教職員は馬車に乗ってこいと言われているから馬車に乗ったのだけれど
明らかに城とは逆、森の方へと進んでいく。
気付いた時には、もう森の中に居た。
というかこれはまずいのではないだろうか。
入学式に間に合わない。ということは新しい先生を紹介する時間に間に合わない。
見えない馬車は森の真ん中で止まってしまう。
荷物と使い魔である猫は私の部屋に届けられているだろうけれど、私はまだここに居る。
私はため息をついてたずなを握ったが動いてはくれない。
目の前に居る、醜く優しい生き物の背中を撫でて少し念じると、諦めたようにコツコツと動き出した。
本当に申し訳ないけれどそのスピードじゃあ、絶対に間に合わないわ。
たずなを握って少しばかり背中を叩くと、彼から「うるさい」みたいな気持が伝わってくる。
本当に申し訳ないと思っているのよ、と念じて私は城へと急ぐ。
「
先生、入学式は始まってますがね」
食堂に近い裏門について、こっそり上がる予定が、Mr.フィルチに見つかった。
彼は、厭味ったらしく「先生」をとても強調する。
「ええ、ああ、そうね!ごめんなさい、急いでるの!」
「先生が遅刻とはね。学生じゃあなくなったんでしょう」
私が学生だった頃はまだフィルチはもう少し若かったし、それからもう少し髪もあったような気がする。
なんて思いながら階段を駆け上がると、彼は下からジロリと私を睨んでいた。
彼は人からの悪意に敏感だ。
走る走る。ローブが走るのを邪魔するようにまとわりつく。
そして目の前にきっちりと閉まった扉を見て落胆した。
つまり生徒は全員入って、そしてやっぱり教師も中に入っているってことで。
ダンブルドア校長の声が聞こえる
「図書館で働いていたマダム・ピンスが体調を崩されたので・・・・」
ああ、しまったもう、どうにでもなれ!
と重い扉をそっと手で押すと、見た目とは正反対に扉はゆっくりと開かれた。
「新しい先生が来られた。丁度、今じゃな。・先生、前へ」
赤、青、黄色、緑のローブが一斉にこちらに注目した。最悪。
ダンブルドア先生が手を伸ばしたので真ん中の通路を小走りで近づく。
ああ、マクゴナガル先生の眉間に皺が入ってるわ。
「ええ、あの、少し問題が起こりまして。ごめんなさい」
「いや、この通り、紹介に間に合ったようじゃ。さぁ席へ。」
教師陣の方を見ると懐かしい顔ぶれと、それからものすごくものすごく・・
そう、マクゴナガル先生の眉間のしわよりずっと深い皺を浮かべて私を睨む、大きな蝙蝠見たいな男。
そしてもっと最悪なことに私の席は彼の隣らしい。
「先生、出来れば入学式に間に合わなかった理由をお聞かせ願いたい」
彼は私が席に着く前に小声で言った。
「ええ。勿論。スネイプ先生。私も貴方に是非お話したいわ。」
だからあえて、私はゆっくり優雅に席に座る。
スリザリンの生徒たるもの、どのような状況でも気品と誇りある行動が必要ってね。
「私も聞きたいですね。
先生」
そのあとに付けくわえられたマクゴナガル先生の不機嫌そうな声には
愛想笑いしか返せなかったけれど。
席について一息、私は故郷に戻ってきた