「・・・・・おはよう、Mrジョン・ハリソン」
永久に開くはずのないはずだったハッチが開き、一気に酸素が肺を支配した。
瞼を開けば、どうせ白衣の男が立っていることだろう。
いつだってそうだ。何も変わらない。
瞼を開いた。白衣の男が数人、ボードを片手に立っている。
同じだ。今度は私に何をさせる気だろうか。
拘束具は外れない。その気になれば、全員殺せる。何を考えているんだろうか。
ここまで、地球人は、馬鹿だったか。
私たちに比べ、知能が劣っているのは分かっていたが、苦労して拘束し、
永遠の眠りにつかせた私を起こして、何になる。
「気分はどうだ?めまいや頭痛などは?」
「・・・・お前たちを殺したいという気持ち以外、何も変わりはしない」
「そうか、君は何も変わっていないようだな。」
またか、まただ。
今度は何をさせる。家族をたてに、私のクルーをたてに、人間兵器にでもなればいいか。
いや、そもそもそう言った目的で作られたんだ。
「その言い方は語弊があるわね、ドクター。彼は人を殺すためじゃなくて、人を救うために起こしたのよ」
「言っておきますけどね、大佐、私は今でも彼を起した事は人類の滅亡に一歩加担したと言うことになりますよ。」
「分かってるわよ、わかってる。彼がしたこともその話しも夢に出るくらい報告書読んだし、聞いたの。」
スーツの色、階級章、ずいぶんと若い大佐殿だ。
「おはよう、ジョン・ハリソン中佐、私は・。階級は大佐、よろしくね」
「何故。」
「なるほど、まぁ拘束されてる貴方と私じゃずいぶんと失礼よね、彼、降ろして頂戴。」
「いや、しかし。」
「私に、拒否権や選択権などはなから与えられていないだろうが、尋ねてもいいだろうか」
「どうぞ」
「今度は何をさせる気だ。人間兵器か?モルモットか?」
「いや、違うわ。貴方と貴方のクルーを連れて、リハビリ、と言えばいいかしら。宇宙へ出るのよ」
「・・・・・」
「だから、今回は、貴方以外のクルーも皆、起こしたいの。出来たらね。皆、優秀なんでしょう?」
「・・・・・・断る」
「さっき、あなた 言ったじゃない。拒否権も、選択権もないって。だから、貴方を先に起こしたの。話をしましょう」
「・・・・・」
変わった女性だった。
髪はブルネット。瞳は蒼。犯罪者を拘束している、いや、過去最大の犯罪者を叩き起こし、話をしようなどといいだした。
「ドクター拘束具を外して、」
近くにいた白衣の男が恐る恐る私に近づいて来た。
見つめる。彼は目線を合わさないようにゆっくり、逃げ腰で拘束具を外していく。
馬鹿らしい。
「ついてきてちょうだい。中佐」
当たり前だがその階級は剥奪されているだろうし、男より、ずいぶんと弱い存在の生き物の下で働く気もない。
拘束具を外した白衣の男以外の残りが、私に袋を頭からかぶせようとした。
「ああ、それ、意味ないわ。彼はそんなのあってもなくても、見えるでしょう、違う?」
「ずいぶんと、勉強したようだな」
「まぁね、貴方が出来た過程も、どんな実験に耐えたのかも、功績も、全部。勿論。この間の『戦争』についても」
「結構。少しは話になるようだ」
「だから。大人しくついてきてちょうだい。」
ぐるりと周りに立っていた男を眺めてから、私はその小さく頼りない背中について行く羽目になった。
男たちは、消してわたしと目を合わそうとしなかたったが、彼女だけは私の目を見て、話をした。
けして交友的な瞳じゃなく、挑戦的な、瞳だった。