「ウィリアムさん、起きてくださいよ」
「・・・・・・・ん。」

眼鏡をかけていないぼやけた視界で自分の体を揺らす相手を確認しようとしたけれど
睡魔と太陽の光で目を開ける気が無くなり
そのまま大きな枕の下へ頭を突っ込んだ。
徹夜明けだって言うのに、誰が僕を起すんだ・・・

「ウィリアムさん!朝ご飯どうするんですか?」
「い、ら、ない・・・」
「もー・・私、午後から大学ですからね!ちゃんと起きて、おうち帰ってくださいよ!」

とぶつぶつといいながら寝室から出ていいく誰か。
ああ、そうか・・・・。
段々としっかりしてきた脳内で、
そう言えばずいぶんと窮屈なベッドだなぁ、なんて思って
そう言えば、枕もシーツも慣れない香りだなぁなんて。

「・・・・、」
「起きました?」

寝室のドアからひょこ、と頭をかしげる彼女。
おいで、おいで、と手招きすると洗濯かご(中には僕が昨夜脱ぎ棄てた服が入っていた)を置いて近づいてくる。
引き寄せて、抱きしめて、

「うぃ、りあむさん!!!起きたんだったら邪魔しないでください!!」
「・・きのう、ここでねなかったの?」
「寝なかったですよ!突然、真夜中に帰ってきて、無言で服脱いで私のベッドに入って行っちゃったんでしょ!」
「覚えてない・・・」
「私、すっごく怖かったんですよ!2時にチャイムなんか鳴らすから!」
「・・そうだっけ・・・だったら鍵頂戴。」
「いや、です!」

年下の彼女は可愛い。
まだ卒業も先なのにMI6から声がかかってる優秀な女の子。
下見に彼女のレポートを読ませてもらって、興味がわいて近づいた。
最初は僕と共通の話ができて、の方が一方的に僕を尊敬していたけれど
気付けばどうだ。僕がに依存してる。
抱き締めれば太陽の香り。髪を撫でれば綿のよう。肌を撫でればシルクの感触。
何処をとっても申し分ない。

「今日、大学休んでよ
「駄目ですよーMI6からお声をかけていただいた以上、優等生でなくちゃ」
「大丈夫だよ、一日位休んだって」
「こういう大人になりたくないです。」
「僕をベッドに残していくの?」
「やめてください!その子犬みたいな顔!」

体をよじって立ちあがろうとする
大学に行く前に洗濯ものを干してしまいたいらしい

「せっかくの休みに一人で過ごせって言うの?」
「せっかくのお休みですから一人でゆっくり過ごしてほしいと言う
後輩からのささやかな気持ちです」
、」
「・・う・・や、だ」
「お願い」
「駄目です」
「出席足りてるだろ」
「足りてますけど、駄目です」
「わかった、じゃあこうする」

腰を抱いたままベッドに倒れこむと彼女も小さな悲鳴を上げてベッドに
転がった。すぐさま立ちあがって距離を取ろうと慌てている間に、
背中からのっかって身動きを封じる。



「やっ・・み、耳元で!やめてください!!」
「おねがい」

耳たぶをはむとみるみる内に首から顔にかけて赤色が差し込む。
せっかく綺麗に整えた髪が台無しだなぁ、なんて思いながら
ピンを丁寧に外していく。髪を結んでいるシュシュは僕があげたやつ。
似合ってる。けれどベッドの上では必要ない。

、いいことしよ」
「言い方が古いです」
「酷いなぁ」

ぐるん、と体を回転させて彼女を見つめると
諦めたようにため息をついた。
そうしてゆるりと立ちあがる。

ー」
「分かりましたよ!もう!だけど、せっかく休むんだったらデートがしたいですデートが!」
「デート?」
「映画見たい、んです。」
「いいよ」
「・・・・友達にノート頼みます。ウィリアムさんは起きてシャワー浴びて、ご飯食べてください!」
「ウィルって呼んで
「ウィル!」

そういうつんざくような怒った声じゃなくて甘えた声で聞きたいんだけれど
まぁそれは映画見終わった後でいいや。安いホテルは嫌だな。
ベッドの音が下品で。普通のホテルにしよ。

「ウィル、はやく起きてください」

部屋を出て行こうとしたが小走りで返ってきて僕の唇にキスを落として
また足早に出て行った(洗濯かごも忘れずに)
僕の可愛い女神の仰せのままに。