ざー、ざーと雨が降る。しばらく外に出るのはよそうかなぁなんて考えてる時。
それは日常の一コマ。ふとしたときに、ちょっと殺してみようかな、なんて思う。
テレビを見ているの白い首をちょっとだけ締めてみようかなって
きっと今まで見たことないくらい綺麗で色っぽい顔をするんだろうなって
僕は自分の手を汚さない主義だけど、君だけは殺してあげてもいいかなって思う。

「ジム?どうかしましたか?」

ソファに座って手渡されたマグを受け取る。
なんでもないよ、って笑う。
なんでもないんだ。君が好きってこと。
おいで、って言ったらいっつもぶつぶつ言うのに
すとんと隣に座った。
心配そうな顔。

「ジム、大丈夫ですか?」

鮮血も似合うと思う。これ以上ないくらいの舞台を作ってあげよう。
沢山、の好きな花とか人形とか、並べて
ちゃんと綺麗にしてあげる。
防腐処理して飾るんだ。右目はルビー、左目はサファイヤ

「・・・・・・・・・ジム?」

マグカップを置いて彼女の右腕をつかむ。
はマグを近くのテーブルに置いて、僕の顔をじっと見る。
昨日、仕事でイタリアの組織を内部破壊しただろう?
すごく素敵な手際だったよ。
僕の家の、僕があげた部屋で、高々1時間くらいでやってのけたね。
沢山の人が死んだことになったのに、君は平然と夕食を作りだした。
十分、綺麗に、狂ってる。
右腕をつかんで引っ張ると彼女はゆっくりとした動作で膝の上に向かい合わせに座った。

「どうしたんですか?なんだか変ですよ」

ゆっくり、ゆっくり、彼女が僕の頭を撫でる。
腰に手をまわしてぎゅーって抱きついたら
背中をぽんぽんと撫でてくれる。
いつもだったら文句言うのに。

「・・・・今日は文句言わないんだね」
「感傷的になってる貴方は珍しいですから」
「感傷的になんかなってないよ」
「いいえ、なってますよ。」
「違う違う。好きだなーって思ってるんだよ。」
「はい。」
は?僕が好き?愛してる?」
「・・・ジムは、私が好きですか?愛してますか?」
「殺したいくらいにね。」
「・・・・・・・・・・・大丈夫ですよ。大好きです。」

愛は人の理性を壊す。
みたいなことを童貞君は言ってたけど、
愛は、どんな人間にも必要なんだよ。
涙はどこかにおとしてきたし
本当の笑い方なんてもう忘れてしまった。
は、ゆっくりと頭の下に僕の頭を抱えて
背中を撫でる。



すとんと膝立ちからキチンと座って僕を見上げて

「大好きです、大丈夫ですよ、何処にも行きません」

頬を撫でて

「だから、そんな悲しそうな顔をしたら駄目ですよ」

悲しそうな顔なんかしてないよ。って言いたかったけど
彼女が珍しくキスをせがんだから、どうでもよくなっちゃった。
きっと、長く続くこの雨のせいだ。