、あいしてる」
「こんなときに言うのは、あまりにも卑怯でしょう。意気地なし」
「二度も・・・断られたら、そりゃ・・・少しは・・・・怖くなるさ。」

声は震えていなかっただろうか。
三度目の告白は、戦闘中だった。瓦礫の山の中に、右わき腹から鉄筋が飛びだしてる彼を見つけて鉱石で鉄筋を切って、
安全な場所へ連れてきたところだった。まだ戦闘は続いている。血はとめどなく流れていく。止まらない。

「鉄筋、抜きますよ」
「・・・出血多量で・・・・死にそうだけど」
「抜いた瞬間に私の血で表面の傷をふさぎます。このまま血が流れていけばどっちにしても死にますから」

怖かった。視界が揺れるが言葉は強く発した。発したつもりだった。
そこら辺にある石で手のひらに傷を作る。半分ブラッドブリードで出来ている私の血ならば、再生能力が強い。
私の体液ならば、応急処置くらいにはなる。
私よりずっとずっと身長の高いスティーブンさんを支えながら鉄筋を握りしめる。耳元では苦しそうな呼吸が繰り返されている

「ねえ・・しんだら・・・・くやしい、から・・きすしてくれないか」
「貴方が目を覚ました時に、必ずしてあげますから。」

そんな気弱なことを言わないでほしい。
彼が舌を噛まないようにシャツを噛ませて鉄筋を引き抜いた。背中に周っていた彼の指が痛いくらいに私の背中を強く握りしめる。
自分の血で血まみれになった手のひらを傷口に押さえつける。鼓動がやけに大きく聞こえる。
自分の心臓の音なのか、それとも目の前の男が生きようとしている音なのか。
しばらくすると、綺麗とまではいかなかったが、傷口は閉じたようだ。
スティーブンさんも脈は弱いが生きている。後は、あと私に出来ることは、気を失った彼にもう傷一つ付けないように、ここで、彼を守ることだ。





「死んだと思った」
「私だって思いました。」

スティーブンさんは白いベッドの上で飄々とそんなことを言った。病院服が似合わない男だ。
私も血液パックから輸血をしながら彼のベッドに座った。
あのあと、戦闘が終わって、クラウスが私のところに駆けよる風景までは覚えていたが、
やはり男性一人の傷を閉じて、戦闘をしたのは無茶だったらしく、気を失って気がつけば病院だった。
スティーブンさんは私が目を覚ます二日前に目を覚ましたとレオくんから聞いて彼の病室を訪れた訳だ。

「何度も死ぬような体験はしてきたけど、今回は怖かった」
「へぇ、スティーブンさんもそんな風に思うことがあるんですね」
「まぁね、クラウスの事は大丈夫だ。俺が死ぬってことは、出来ることは全部やって死ぬわけだから。
あいつは悔やむだろうが、俺は悔やむことはないし。仲間だって後は上手くやってくれる。
だけど、今回は好きな子を残して死ぬんだと思うと、どうもね」
「いい歳して、何言ってるんですか」
「いい歳して、本気でが好きなんだよ」

頬に張られたガーゼを彼の長い指が撫でる。

「わたし寂しがり屋なんです。」
「それに関しては、俺も努力するけど、きっと君を悲しませることが多くはなると思う」
「一人になるの、怖いんです」
「うん、知ってる」
「夜だって、一人で寝れない」
「うん」
「それに、それに」
私の身体には、ライブラの宿敵の血が流れている。平和が訪れるとき、最後の一人は私なのだ。
これまで一緒に戦ってきた仲間に、大切な人に、殺される日が、いつか来る。そうやって終わって行くんだ。

「まだ、来てもいない未来に涙しないでくれよ」

好きな人が出来てしまったら。家族になったら。家族が出来たら。私は、どうすればいいんだ。半分は化け物で出来ているのに

「最悪の事を考えて泣かないで。」
「だってっ・・・いつか来るから、だから・・・いつかさよならしなくちゃならないから、すきなひとはっ・・・いらないんです」
「絶対にが考えているような結末にならないようにしよう。そうなったときは俺が一緒に死んであげるから。」
「むせきにんなこと、いわないで」
「約束するよ。絶対。これまで世界を何度も救ってきたんだから、そのぐらいのわがままは許してほしいな。でもそうならないようにするから。」

涙は止まらない。これまで秘密にしてふたをして、知らないふりをしてきた重くて暗い気持が心の中をいっぱいにした。

「まずは、約束してたキスをくれないかな」

涙で揺れる視界の向こうに薄く笑った伊達男が一人。薄い唇に小さくキスしたら頭を抱えて抱きしめられた。

「こんなに好きで、追いかけても捕まえられなくて、俺の本当の姿を受けて止めてくれる女の子はミーアだけなんだよ。
きっと俺みたいな男に捕まっちゃいけない女の子だけど。ごめん、。愛してる」
「わ、たしっ・・もっ・・・すきっ」

四度目の告白は泣き声いっぱいの病室で。